北国仕様のZEB 渡辺パイプ 函館サービスセンター(前編)

 全国に多数のサービスセンターを展開する渡辺パイプが、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)に取り組んでいる。2021年4月には寒冷地の北海道函館市で第3弾の建物が完成。一次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスとなるZEBを実現させた。

 

 営業所や店舗を多数展開している企業で、積極的にZEBに取り組む事例はまだ少ない。そんななか2020年9月以降、矢継ぎ早にZEBを展開しているのが渡辺パイプ(東京・中央)だ。

 

 水関係の管工機材を軸に住宅設備機器、電設資材などを幅広く販売する同社は、全国に300拠点、約500の店舗を所有する。既存店舗の合併なども含めて、年間10棟前後の新規店舗を開設している。この1年で、サービスセンター(SC)のうち計画中の事例も含めた新築5件をZEBとした。既に完成している4件は全て、一次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスとなるZEBだ。

 

 「2020年9月に完成した岐阜SC(岐阜市)で初めて取り組み、ZEBの実績を増やしながら計画を進めてきた。Nearly ZEB(一次エネルギー消費量の削減率75%以上)やZEB Ready(一次エネルギー消費量の削減率50%以上)も視野に入れていたが、検討の結果、正味ゼロまたはマイナスのZEBでいけると判断した」。総務ユニット建築・営繕グループの竹中耕司グループリーダーは計画の経緯をそう振り返る。

 

 標準的な6地域に立地する岐阜に続いて、ZEBの第2弾を2021年2月に延岡SC(宮崎県延岡市)で、第3弾を2021年4月に函館SC(北海道函館市)でそれぞれ開設した。全国展開に向けて、6地域のほか南の暑い地域(7地域)と北の寒冷地(3地域)でまず実例を手掛け、地域に応じたZEBの勘所をつかむのが狙いだった。ここでは、寒冷地版である函館SCの建物を紹介する。

 

渡辺パイプ 函館サービスセンターの南東側外観(写真:渡辺パイプ)

 

太陽高度に合わせてパネル配置

 

 函館SCは、市内の観光スポットである五稜郭から1kmほど西側に位置している。1166m2という延べ面積は、同社のSCとしては大きい部類に当たる。2階建て鉄骨造の建物は、敷地形状に沿って南北に長い15m×58mの長方形平面を持つ。

 

 前面道路側の南に2階建ての事務室を配し、その北側に吹き抜け状の倉庫が細長く延びる。事務室部分の横連窓とモノトーンで色分けした外装が印象的な外観デザインは、同社がSCで統一展開するものだ。設計・施工とZEBプランナーには、同社の建物をこれまでも複数手掛けてきた大和ハウス工業が参画した。

 

2階事務室(写真:渡辺パイプ)

 

吹き抜け状の倉庫(写真:渡辺パイプ)

 

 ZEBに向けた函館SCの試みで目を引くのは、一見、余裕をもって配置したかに見える屋上の太陽光発電パネルだ。

 

間隔を取ってゆったり配置した屋上の太陽光発電パネル(写真:渡辺パイプ)

 

 9つに分割配置した太陽光パネルを30度の急な角度で置き、それぞれの間は3.5mの間隔を設けている。建設地は太陽高度が低いため、効率的に発電するには太陽光パネルの設置角度を起こす必要がある。その結果パネルの影が長く伸びるので、設置する間隔を広く確保しなければならない。緯度の高い北国ならではの並べ方だ。

 

 合計34kWの太陽光パネルで発電した電力は自家消費し、災害時用に11.2kWhの蓄電池を導入した。「蓄電池によって、ライフラインが断絶した後もSCの業務を続けられる最低限の電力を確保した。太陽光発電ができない天候の場合も1、2階の事務室のパソコン、部屋照明、シャッター1カ所などを8時間動かせる容量を装備している。太陽光発電ができる天候であればエアコンなども稼働でき、ほとんどの作業が可能になる」と竹中氏は説明する。

 

 計画に当たっては、応募時期が計画スケジュールに合致したために環境省の「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金レジリエンス強化型ZEB実証事業」を活用した。蓄電池の導入は、補助金の要件に合わせて決めている。

 

「適正レベルを見極める」

 

 寒冷地では、消費エネルギー量を抑えるために建物の断熱性の確保も重要なポイントになる。

 

 断熱ゾーンを1、2階の事務所まわりに限定し、ZEBのエネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版)による試算をしながら、壁内結露が生じない断熱材とガラスを設定した。例えば外壁は、硬質ウレタンフォームを厚さ130mmで吹き付けた。鉄骨柱の間に充填したほか、鉄骨柱の室内側もぐるりと覆っている。

 

 屋根面には厚さ50mmのイソシアヌレート断熱材を施したうえ、天井裏にもセルローズファイバーを厚さ200mmで吹いた。窓サッシには建築用のアルミサッシにLow-E複層ガラスを組み合わせた。投資効果と費用対効果を勘案して、普及しやすいレベルの仕様を意識した。

 

 空調と換気設備には全熱交換器やCO2センサーを導入して負荷を減らし、LED照明には照度センサーを導入するなどして設備機器の効率化を図った。

 

 自家消費する太陽光発電は現在、発電した電力を少し余らせている状況だという。「手始めの計画では高いレベルの仕様を設定したが、実際には少し重装備になったと感じている。運用状況も検証し、コストをかけ過ぎない適正なレベルを見極めていきたい」と竹中氏。そのうえで全国の店舗に展開していく考えだ。

 

建築概要

建物名称:渡辺パイプ 函館サービスセンター

 

所在地:函館市

地域区分:3地域

建物用途:事務所等

構造・階数:鉄骨造・地上2階建て

延べ面積:1166m2

発注者:渡辺パイプ

設計・施工者:大和ハウス工業

完成:2021年4月

 

 

(日経クロステック「省エネNext」公開のウェブ記事から抜粋)


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