「太陽光なし」の新ZEH誕生

2018年度のZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)支援事業案の内容が明らかになった。省エネ性能などを強化したZEH+(ゼッチプラス)のほか、日照時間や積雪量などに配慮したNearly ZEH(ニアリーゼッチ)、都市部の狭小地を考慮して太陽光発電システムの搭載を求めないZEH Oriented(ゼッチオリエンテッド、仮称)など、新たなラインアップが加わった。

補助金額は条件によって異なるものの、基本的にZEHなどは1戸当たり70万円、ZEH+は同115万円を補助する予定だ。

 

電気自動車の普及に配慮

18年度に予定している戸建て向けのZEH支援事業は、17年度と比べて複雑だ。基本的なZEHをベースに、上位と下位のランクを創設して、合計5つのタイプで構成している。

新ZEHでは、大きく2つの内容が目玉となる。1つは、上位ランクとして新設した「ZEH+」だ〔図1、2〕。一次エネルギー消費量の削減率を従来のZEHよりも高くしたほか、選択式の要件を採用した。

従来のZEHを上回る上位クラスとしてZEH+を新設。「高断熱化」「高度エネマネ」「電気自動車対応」の3つの要件から2つを選択する(資料:取材を基に日経ホームビルダーが作成)

 

データは1月中旬の取材時点のもの。赤字は2018年度のポイント(資料:取材を基に日経ホームビルダーが作成)

 

選択式では、「高断熱化仕様の採用」「高度エネマネ(エネルギーマネジメント)システムの搭載」「電気自動車などの充電用専用コンセントの搭載」の3要件のうち2つを満たす必要がある。

「高断熱化仕様の採用」は、外皮性能の向上が狙いだ。基準は現行の外皮強化型ZEH(強化外皮加点)や国土交通省のランクアップ外皮基準を参考にして検討している。例えば6、7地域の場合、UA値0.50が求められるイメージとなる。

「高度エネマネシステムの搭載」では、空調設備と給湯器を制御できるHEMSの採用が要件となる。これまでのZEHに搭載するHEMSは、エネルギー消費量の計測(見える化)が求められていた。だが、高度エネマネシステムが対象とするHEMSは、エネルギーの見える化だけでなく、設備機器の制御まで求められる。

「電気自動車などの充電用専用コンセントの搭載」は、電気自動車との連携を見据えたものだ。太陽光発電システムで発電した電気を電気自動車に充電するといった、自家消費型の住宅を想定している。

ただし、現時点では電気自動車への充電を制御する仕組みが整っていないので、連携機能までは求めない。

 

ZEHへの不満解消も

もう1つの目玉が、下位ランクの拡充だ。「Nearly ZEH」の見直しと「ZEH Oriented」の新設が該当する。これらの仕様は、従来のZEHに対する不満の一部を解消できる可能性がある。

「Nearly ZEH」は17年度の仕様から対象地域を見直した。従来は、地域区分で1、2地域が対象だったが、これを拡大。日射量が少ない地域や多雪地域も対象とするよう改める。

具体的な対象地域や要件は検討中だ。「日射量地域区分で厳しい順から2段階程度を対象とするほか、垂直積雪量が100cmを超えるような地域をイメージしている」と、経済産業省資源エネルギー庁省エネルギー課の濱中郁生課長補佐は説明する。

新設する「ZEH Oriented」は「Nearly ZEH」の下のランクとしての位置付けだ。都市部の狭小地を対象としており、太陽光発電システムの搭載が不要な点が特徴だ。

狭い敷地が密集するような都市部の住宅地で、第1種および第2種の中低層の住居専用地域では、南側に太陽光発電システムを設置するのが難しい。北側斜線制限によって有効な屋根面積を確保しにくいからだ。この点を考慮して、太陽光発電システムを搭載しなくても、ZEHレベルの断熱性能や省エネルギー性能を持ち、将来のゼロエネルギー化が実現可能な住宅であれば評価する。

なお、基本となるZEHの仕様は、17年度に経産省が実施していた内容をほぼ継承する。環境省が中心となり、同事業を実施する予定だ。「補助金額」「補助金が加算されるオプションの追加」「対象となる事業者の拡大」の3点は、従前と異なっている。

 

設備に頼り過ぎない審査を

ZEHの公募審査の基準についても、大幅に見直す予定だ。

経産省では、省エネ率を基本にZEHの補助対象であるか否かを審査していた。だが、省エネ率の競争が起こってしまい、設備に頼り過ぎたZEHや窓を小さくして断熱性能を高めたZEHなどが増えるといった弊害が生じた。

そこで、経産省は新たな基準設定に踏み出すことにした。同省の濱中課長補佐は、「ZEHにしたからといって、生活の質が落ちたり、住宅としての価値が損なわれたりするような支援事業にはしたくない」と言う。そのためにも、どのような審査方法が良いか、ゼロベースで考える。

出典:日経ホームビルダー、2018年3月号 pp.15-17 ニュースの深層 記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

(日経ホームビルダーのウェブ記事を転載)


 

関連コンテンツ

ブログTOPはこちら 製品一覧はこちら
お問い合わせフォーム

関連する記事