自然と隔絶しないZEHを目指す

杉浦伝宗 氏(アーツ&クラフツ建築研究所代表)
聞き手/小原 隆=省エネNext編集長

 

アーツ&クラフツ建築研究所(東京都港区)代表の杉浦伝宗氏は、建材一体型太陽電池(BIPV=Building Integrated Photovoltaics)で「多目的コミュニティスペース」(川崎市)を設計した。窓が発電する建築だ。BIPVの可能性について、杉浦氏に聞く。

図1

杉浦伝宗 | Denso Sugiura 1952年愛知県生まれ。74年に東京理科大学理工学部建築学科卒業。大高建築設計事務所勤務を経て、83年にアーツ&クラフツ建築研究所設立。16年から千葉大学非常勤講師。著書に「苦手克服!これで完璧! 矩計図で徹底的に学ぶ住宅設計 S編」(共著、オーム社)ほか(写真:都築雅人)

 

— 2017年4月に完成した「多目的コミュニティスペース」は、建材一体型太陽電池(BIPV)を開口部に採用しています。そのメリットをお聞かせください。

建物が密集する都市住宅では、トップライトからの日射取得が効果的です。多目的コミュニティスペースでは、両面ガラスの太陽光発電モジュールを、透光性がある屋根材として開口部に使用しました。同様の提案を、リフォームや新築で行っています。

光の透過率は10%程度ですが、それでもかなり明るい。天井を透光性のある素材で張り、天井の懐に滞留する暖気は、夏季は排出し、冬季は暖房に活用する提案です。建て主が太陽電池の導入を考えている場合は、建材一体型にすれば屋根材が不要になりコストも下がります。

ただし、両面ガラスの太陽光発電モジュールは、現時点では日射熱取得率や断熱性能の数値が明示されていないようです。そのため、外皮の性能を正確に計算することが難しく、省エネ基準など法制度への適合の可否を判断しにくい状況です。

図2

杉浦伝宗氏が設計し、2017年4月に川崎市に完成した「多目的コミュニティスペース」。木造2階建てで延べ床面積は155.52m2。1階は木工のワークスペースと倉庫、2階はペットサロンとサロン・ギャラリー。BIPVとして両面ガラスの太陽光発電モジュール計42枚(トップライト6枚、開口部36枚)を導入。太陽電池の容量は11.56kW(写真:トリナ・ソーラー・ジャパン)

 

— BIPVの普及に向けて、建材としての熱性能表示など、データが求められているわけですね。 

そうです。それが明解になれば、提案しやすくなるし導入もより進むはずです。私は、建物に太陽電池を付加するのではなく、屋根面や外壁面からの採光と発電を一つの建材で実現できることにBIPVの意義があると考えています。 

加えて、光透過性のある断熱材の開発が進めば、両面ガラス太陽光発電モジュールには、より多様な使い道が想定できるようになります。例えば、ガラス屋根と透明な天井の間に、白色のグラスウールを「雲」のように充填し、日中は天井全体が面発光するデザインが可能になるかもしれません。 

 

— 省エネ計算を始めたと聞きました。 

多目的コミュニティスペースで省エネ計算を試みました。両面ガラスの太陽光発電モジュールを単板ガラスとして算出すると、省エネ基準の一次エネルギー消費量基準(BEI)はクリアしたのですが、残念ながら外皮基準はクリアできませんでした。 

ただし、開口部の半分を高断熱仕様にするとクリアできます。BEI値は0.75程度となり、あれだけ開放的な建物でも工夫すればネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)が実現できる感触を得ました。 

アトリエ系の建築家は、省エネ性能を計算したり、ハウスメーカーのような高性能住宅を手掛けたりするのは苦手なイメージがあるかもしれません。でも、やってみると難しくないことがわかりました。先に進むためにも、とにかくデータが欲しいですね。

図3

「多目的コミュニティスペース」2階のサロン・ギャラリー。東西の開口部に両面ガラス太陽光発電モジュールをガラスの代わりに使い、採光しながら発電する(写真:トリナ・ソーラー・ジャパン)。

 

太陽光発電と住宅のこれから

 

— 住宅の高断熱・高気密化の動きをどうみていますか。 

高断熱・高気密が優れた温熱環境を実現することは理解できます。一方で外部(自然)との遮断が進むのではないかと懸念しています。本来、日本の住まいは自然との関係性が大切でした。高断熱・高気密+再生可能エネルギーでZEHは実現できますが、それを無抵抗に受け入れたくはありません。 

1979年に設計した自邸はガラスの箱のような建築です。今では周囲の落葉樹が育ってきたので、夏場は木陰で暑さが解消されます。確かに冬場は寒いけれど、自然を感じながら快適に暮らしています。 

そこに、多目的コミュニティスペースの例に倣い、開口部に太陽光発電モジュールをプラスして、採光しながら発電すれば、極端に外部と絶縁しなくてもZEHは可能になると思います。

 

図4

杉浦氏が考える住宅の環境や省エネ対策の未来。BIPVの普及で、自然と融合した開放的な創エネ住宅の可能性が広がる(図:アーツ&クラフツ建築研究所)

 

— 建築家としてZEHにどう取り組んでいきますか。 

これは私の経験ですが、多目的コミュニティスペースにBIPVを採用した結果、エネルギーに対する認識が大きく変わりました。モニターの発電量推移を見ていると、建築が太陽と呼応して、生きているように感じるのです。自然とともに暮らしている感覚です。 

その結果、エネルギーを無駄にしない暮らしを心がけるようになりました。ZEHは設備や性能ではなく、こうした「感覚」を入り口にしたほうが良いように思います。 

設備でガチガチに固めたブラックボックスではなく、一般の生活者もわかる省エネの方法がある。建築家がそれをしっかり説明できないと、過剰に自然と隔絶した家ばかりになってしまう。 

実は私も数年前までは「太陽電池なんて……」と懐疑的に見ていました。でも実際に導入してみて、意識は大きく変わりました。

図5

左が杉浦氏、右が小原隆・省エネNext編集長(写真:都築 雅人)

 

日経 xTECH「省エネNext」公開のウェブ記事を転載)


 

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