太陽光発電の設置に確認申請は必要か?

 既存建築物の屋上に太陽光発電設備を設ける場合、建築確認申請は必要になるのか。農地に支柱を立てて設置する場合はどう扱われるのか。太陽光発電設備と建築法規の関係について、指定確認検査機関のビューローベリタスジャパン(横浜市)に聞いた。

 

 一般に、地上に立つ建築物は建築基準法の適用を受け、新築や増改築をする際には地域や面積に応じて建築確認の申請(確認申請)を行う必要がある。では太陽光発電設備を設置する場合には、建築基準法はどう関わってくるのだろうか。

 

 太陽光発電設備は、架台の下の空間をどう利用するかによって建築基準法の扱いが大きく異なる。

 

 「架台の下を『屋内的用途』に供する太陽光発電設備については、建築基準法の規定を適用する『建築物』として扱う」と、ビューローベリタスジャパン建築確認審査部技術課の渡邊仁士氏は説明する。屋内的用途とは、居住、執務、作業、集会、娯楽、物品の陳列、保管、格納などを指している。例えば、架台の下で何らかの作業をする、いわゆるソーラーシェアリングタイプの太陽光発電設備は建築物とみなす。これらのように建築物に該当する太陽光発電設備を設ける場合は原則、確認申請が必要だ。

 

 なお、農地に支柱を立てて設置するケースには例外がある。壁を設けず農作物の生育に適した日照量を確保するように設計し、農地法の許可を受ければ建築物とはみなされない。この場合は原則、確認申請は不要となる。

 

確認申請の要否の考え方(一部、例外あり)。太陽光発電設備に対する建築基準法の扱いは「屋内的用途」があるかどうかで大きく変わる。屋内的用途に使わない太陽光発電設備を建築物の屋上に設ける場合には原則、確認申請は必要ない(図:国土交通省「建築確認手続き等の運用改善(第二弾)及び規制改革等の要請への対応についての解説」を加工)

 

 屋内的用途に利用しない太陽光発電設備は、いくつかの条件を満たせば設置に際して確認申請は必要ない。細かくは、「建築物の屋上に設置する場合」と「土地に自立して設ける場合」に分かれる。

 

 建築物の屋上に設置する太陽光発電設備は、その建築物に電気を供給する目的のものは「建築設備」となり、建築基準関係規定に適合する必要がある。ただし、架台の下を「屋内的用途に利用しない」ことに加えて「メンテナンスを除いて人が立ち入らない」という条件を満たせば、確認申請は原則不要だ。

 

 土地に自立して設ける場合、太陽光発電設備は電気事業法に基づく「電気工作物」として扱う。建築物に該当しないため建築基準法の規定は準用しない。設置に際して確認申請も必要ない。

 

屋上設置は高さや構造耐力に注意

 

 屋内的用途のない太陽光発電設備を建築物の屋上に設置する場合について、もう少し説明しよう。前述のように、この場合は太陽光発電設備を建築設備として扱うため、確認申請が不要であっても建築基準法への適合が求められる。建築物の高さや防火規定、建築物の構造耐力に関する規定などには特に気を付けたい。

 

 構造耐力に関して、ビューローベリタスジャパンの森口英樹執行役員テクニカルマネージャーは次のように注意を促す。「太陽光発電設備の設置によって荷重が増加する場合は、既存のスラブや梁(はり)、基礎などの構造耐力上主要な部分が許容応力度の範囲内かどうかを検討する必要がある。長期荷重だけでなく屋根部分の荷重が増えるので、地震荷重に対してギリギリになっている可能性もある」

 

 高さについては、条件に応じて絶対高さ(第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域における10mまたは12mの高さ規制)、日影規制、北側斜線などの制限がかかる。「設置するとこれらの規定を満たさなくなる場合には、太陽光発電設備は設けられない」(渡邊氏)

 

 もっとも建築基準法やその取り扱いは、全般的には太陽光発電設備を設置しやすい方向へと変わってきている。例えば2011年に国土交通省が出した、屋内的用途に供しない太陽光発電設備を「屋上部分」として取り扱わないとする技術的助言だ。

 

 建築基準法では、屋上にある階段室や昇降機塔などで水平投影面積の合計が建築面積の8分の1以内のものを「高さに算入されない建築物の屋上部分」としている。これらは、一部の場合を除いて屋上部分は高さにカウントしない。実質的な制限緩和につながるため、屋上部分の面積を建築面積の8分の1近くに設定した建築物は多い。

 

 11年の技術的助言が出される前は、太陽光発電設備を屋上部分として扱っていた。そのため太陽光発電設備を設けると屋上部分の合計面積が建築面積の8分の1を超えてしまう場合は断念せざるを得なかった。取り扱いの変更により、太陽光発電設備を設けられる既存建築物の幅が広がった。

 

2011年以降は太陽光発電設備を「屋上部分」以外として取り扱うことになり、既存建築物に導入しやすくなった(図:国土交通省「建築確認手続き等の運用改善(第二弾)及び規制改革等の要請への対応についての解説」を加工)

 

(日経クロステック「省エネNext」公開のウェブ記事から抜粋)

 


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