BEIとBPIで省エネを評価

改めて省エネ適判、 BELS、ZEBなどの内容を整理してみよう。建築物省エネ法は、非住宅の大規模建築物の新築と一定面積以上の増改築に対して、省エネ基準への「適合義務」を課した。これらは建築確認時に省エネ適判が必要。中規模建築物の新築・増改築は、所管行政庁への「届け出義務」が課せられる〔図3〕。

 

〔図3〕適判の対象は2000m²以上の新築非住宅など

(資料:日経アーキテクチュアが作成)

建築物省エネ法は、非住宅の大規模建築物(特定建築物)の新築などで基準適合を義務化した。国は20年までに、全ての新築建築物に省エネ基準の適合を求める方針(資料:日経アーキテクチュアが作成)

 

省エネ性能の評価方法は、「一次エネルギー消費量基準(BEI(ビーイーアイ))」と、外皮の性能を示す「PAL*(パルスター)の削減率(BPI(ビーピーアイ))」に大別できる〔図4〕。いずれも基準値に対する設計値の割合で示し、1.0が「省エネ基準相当」の性能に当たる。省エネ適判とBELSは、基準値は同じ。新築の場合はいずれも「BEI=1.0以下」が条件だが、外皮に関するBPIは問われない。

 

〔図4〕一次エネルギー消費量はBEI、外皮はBPIで評価

(その他一次エネルギー消費量を除く)(資料:日経アーキテクチュアが作成)

(資料:日経アーキテクチュアが作成)

 

建築物省エネ法ではより高性能な誘導基準に基づく「エネルギー消費性能向上計画認定」もある。新築の基準値はBEIが0.8以下、BPIが1.0以下で、所管行政庁の認定による容積率などの特例がある〔図5〕。

〔図5〕省エネ適判とBELSはBPIが評価対象外に

※一次エネルギー消費量の削減率=(1−BEI)×100。ただし再生可能エネルギーは売電量を含む(資料:日経アーキテクチュアが作成)

 

ZEBの評価が求められる経済産業省の補助制度「ZEB実証事業」でも、外皮性能は「BPI=1.0以下」が基準だ。だが一次エネルギー消費量については、BEIそのものではなく「一次エネルギー消費量の削減率」が評価軸になる。この削減率はおおまかに言えば「(1-BEI)×100」で、再生可能エネルギーの計算時に売電量を含む点がBEIと異なる(BEIは売電量を除いて計算)。

 

適判の大多数はモデル建物法

BEIの計算には、建築研究所がホームページなどで公開しているプログラムを用いるのが一般的だ。このプログラムには、最も精緻に計算できる「標準入力法」と少し簡略化した「主要室入力法」、最も簡易な「モデル建物法」がある〔図6〕。

 

〔図6〕省エネ適判の主流は「モデル建物法」

〇は利用可能な方法、◎は多く使われている方法、×は利用不可(資料:日本ERIの資料などをもとに日経アーキテクチュアが作成)
※モデル建物法の「一次エネルギー消費量基準」をBEIm、「PAL*の削減率」をBPImと呼ぶ

 

実務上、使われることが多いのは標準入力法とモデル建物法だ。両者の違いについて、登録省エネ判定機関である日本ERI省エネ推進部の高橋祥直氏は次のように説明する。

「標準入力法は精緻である分だけ入力に手間がかかり、工事監理や完了検査の負担も大きい。モデル建物法は簡易だが、省エネ性能の計算値が相対的に低め、つまり『安全側』に算出されることが多い。ただしモデル建物法は、条件によっては標準入力法の計算値よりシビアに出るケースもあると聞く」

こうした特徴を踏まえ、2種類の方法をどう使い分けるべきか。

ZEB実証事業では、モデル建物法は使えないので、必然的に標準入力法の一択となる。その他の申請ではどちらも使える。

「当社が審査した省エネ適判事例の96~97%は、作業負担の少ないモデル建物法を利用していた。標準入力法は、申請者がBELSで少しでも高い評価を得たいと考える場合などに向いている」(高橋氏)

 

PAL*は建築の仕様が左右

外皮性能のBPIに用いるPAL*は、「省エネルギー基準地域区分」と建築物の用途に応じて、基準値が決まっている〔図7〕。PAL*の数値(設計値)は建物外周部「ペリメーターゾーン」における年間熱負荷をその範囲の床面積で除して算出する。

〔図7〕PAL*の基準値は地域区分と用途に応じて設定(「建築物エネルギー消費性能基準を定める省令」から)

(資料:日経アーキテクチュアが作成)

〔PAL*計算の対象となるペリメーターゾーンのイメージ〕

(資料:日経アーキテクチュアが作成)

 

この計算には一次エネルギー消費量と同じく、標準入力法やモデル建物法のプログラムを用いる。外皮の断熱仕様、窓の寸法、サッシやガラスの種類、庇の寸法などが入力項目になる。PAL*は省エネ適判やBELSの基準には含まれないが、建築物に求められる基本的な性能基準であることに変わりはない。  

 

出典:日経アーキテクチュア、2018年9月13日号 pp.90-93 どんとこい! 省エネ建築

記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

日経 xTECHのウェブ記事を抜粋転載)


 

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