IoTを活用した「我慢しないZEB」エネフィス四国(前編)

「運用の工夫で、我慢しないネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)にしていく」。2019年5月、高松市内に完成したZEBとなる自社ビル「エネフィス四国」の使い心地について、総合設備会社ダイダン(大阪市)四国支店技術部管理課の片山茂克担当部長はこう語る。

 

エネフィス四国は、JR高松駅や高松城址(じょうし)・玉藻公園の東側に立地する。3階建て、延べ面積1181m2の小規模オフィスビルだ。2階にバルコニーを設けた彫りの深い南面のファサードが外観を印象付けている。2階と3階の屋上に合計49.6kWの太陽光発電設備を載せ、設計時点の「創エネを含む1次エネルギー消費量の削減率(その他エネルギー消費量を含まず)」を101%とし、ZEBの要件を満たした。

 


ダイダン四国支店「エネフィス四国」の南西側外観(写真:ダイダン)

 

ダイダンは2016年4月、ZEB Ready相当の「エネフィス九州」(福岡市)を完成させている。それから3年。エネフィス四国では、「エネフィス九州の運用実績を踏まえて、ZEBの技術を深化させながら、より広く活用できる汎用性の高い設備を採用した」(ダイダンの杉浦聡エンジニアリング本部ZEB推進部長)。

 

計画に際して掲げたコンセプトは4つ。エネフィス九州の実績を踏まえた「ZEB化技術の深化」、被災時における支店機能の維持や事業継続性の確保を目指した「事業継続計画(BCP)対策」、あらゆるモノがネットにつながるIoT技術を導入した「快適性の向上」、イニシャルコストとランニングコストを低減させる「経済性の向上」だ。

 

早稲田大学の田辺新一教授、工学院大学の野部達夫教授による監修を得て、NTTファシリティーズ(東京都港区)とダイダンが設計・施工を担当した。

 

一般に、床面積に対してできるだけ外皮の表面積を抑え、建物の熱負荷を低減させる設計がZEB化への近道となる。例えば、1階から最上階まで同じ長方形平面を重ねた箱形建物とすれば効率的だ。ところが、エネフィス四国はこうした常道とは対照的に、凹凸の多い建物になっている。

 

3階建ての建物は、東西18.9m×南北26.1mという長方形平面を基本にしつつ、断面方向と平面方向それぞれに凹凸が多い。会議室と倉庫、蓄電池室などが入る3階部分は、建物の北側部分に寄せている。エントランスホールのある1階は、小さな打ち合わせ室と資材室などを配した以外はピロティ形式の駐車場としている。

 

事務室のある2階は、中庭式のバルコニーを組み入れてコの字形の平面とした。中庭を挟んで南北に事務室を並べ、その結び目に階段やエレベーター、設備コアなどが並ぶ。

 


2つの事務室に挟まれた2階の中庭バルコニー(写真:ダイダン)

計画地は津波浸水区域に立地するため、設計に際しては1階をピロティとし、重要な施設を置かないようにした。電気設備なども上階に配した。3階にはリチウムイオン蓄電システムを設けて、停電時にも2~3日は事務所が稼働できるようにした。2 階の事務室を含め凹凸の多い建物形状は、BCP対策を踏まえた上で各階に必要な室を配した結果生まれたものだ。

 

同時に、ZEBを実現する大前提となったのが、熱負荷を低減する建築設計上の基本的な工夫だ。

 

鉄筋コンクリート造のエネフィス四国は、主な外壁と屋根にポリスチレンフォーム断熱材(厚さ35mmなど)を施し、開口にLow-E複層ガラスのアルミ樹脂複合サッシを採用した。外皮性能を示すBPI(PAL*の削減率)は0.59。もともとはエネフィス九州と同等のBPI=0.70を目指して各仕様を設定したが、結果的に0.11ポイントの性能アップとなった。

 

地中熱を取り込んで躯体蓄熱

 

建築設計上の工夫と並行して、設備技術でも多様な仕掛けを導入した。

 

温熱環境面では汎用的なパッケージエアコンによる空調をベースに、滞在時間の長い2階事務室の壁面と床面に躯体蓄熱を導入して空調負荷のピークカットを図った。躯体蓄熱には、アースチューブや杭(くい)を介した地中熱採熱を活用した。

 

ピロティの地下3mの深さに設置した全長20mのアースチューブに外気を導入して採熱する。直径600mmのチューブに取り入れる外気は1時間当たり2700m3。例えば夏季に35℃の外気を地中に引き入れた場合は25℃程度に冷える。アースチューブの外周部にも熱交換チューブを巻き、ここでも熱交換した中温冷水を得る。

 

杭採熱は、深さ20mの12本の杭を利用した。杭の中に設けた管に1分間当たり30リットルの水を流し、採熱量は10kWを見込む。

 

「エネフィス九州では実験的に3種類の地中採熱の仕組みを導入し、パッケージエアコンは使用しなかった。エネフィス四国では汎用性の高い設備システムを組み合わせ、導入コストを低減させた」(杉浦氏) 

 

事務室では、空調と照明それぞれにタスク・アンビエント方式を採用した。室内全体を対象としたアンビエントの空調と照明を担うのは、ダイダンが開発した空調吹き出し口と照明を一体化したユニット「シーリングフリー」だ。空調ダクトの役割を担う筒の両側にLED照明を組み合わせた製品で、躯体からユニットをつり下げれば天井仕上げを不要にすることもできる。

 

個々の席には、3種類から選べる机上のタスクライトのほか、利用者の手元で設定できるパーソナル空調椅子「クリマチェア」を用意した。オフィス家具のオカムラと共同開発した製品だ。冬は座面のヒーター、夏は座面両側の吹き出し口からの送風と座面からの吸い込みによって、座っている人の体感温度をプラスマイナス1℃分、調整できるという。

 


シーリングフリーを設けた事務室(写真:ダイダン)

 

建築、設備の両面における設計時の工夫に加え、もう1つの特徴となっているのは運用面での省エネだ。IoTを利用した自動制御システムを採用した。無線LANのWi-Fiを通じて、シーリングフリーやクリマチェアを含めた個々の設備機器の情報をクラウドに蓄積し、事務室の監視や情報の書き換えを遠隔で行えるようにした。

 

空調をはじめとする設備機器の細かな調整も可能になる。例えばクリマチェアでヒーターや送風装置を使っている数を把握して、ベース空調の吹き出し温度を自動調整する。シーリングフリーの照明は、従業員が帰宅するとその上部周りから順次消灯していく。残った社員に暗い印象を与えないように、一部の壁を照らすといった試みも取り入れた。省エネにとどまらず、快適性や健康の増進に結び付けることを意識した工夫だ。

 

クラウドで自動制御するシステムは、現地での配線工事が不要になる。導入コストの削減効果に加え、メンテナンス上のメリットも大きい。「従来は、設備の設定を変更したい場合には、遠隔地にいる担当者に出張してもらう必要があった。今回のシステムは連絡を受けた担当者がクラウド上で調整できるため、省力化できる上に運用の改善も容易だ」と片山氏は指摘する。

 

19年6月からは月1回をめどに技術研究所や東京の本部スタッフと使用状況を検証する運用会議をスタート。より適切な運用に向けて調整を進めていく。

 

(日経 xTECH「省エネNext」公開のウェブ記事より抜粋) 


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